カカオから魅惑のチョコレートができるまで

カカオベルトと呼ばれる遠い熱帯地域の国々で大切に栽培されているカカオ。カカオ豆は現地の多くの人々の手作業を経て、作り手のもとに届きます。ここでは、カカオ豆がチョコレートになるまでの流れを簡単に説明していきましょう。その前に、チョコレートは「発酵食品」であることをご存知でしたか?カカオ豆は収穫された後、現地で「発酵」、「乾燥」という工程を経て輸出されます。現地で行なわれるこの「発酵」の工程は実はとても重要で、チョコレートの香りや風味に深く反映されます。美味しいチョコレートを作るまず第一の要素として、この良質な「発酵」を経た品質の高いカカオ豆を選ぶことからはじまります。しかし、その貴重なカカオ豆の素材の良さを100%生かし、美味しいチョコレートに仕上げられるかどうかは、その後の「精錬」「焙炒」「磨砕」「混合」「微細化」「精錬」「調温」「冷却」といったチョコレート作りに欠かせない時間と手間のかかる作業工程で決まります。

輸入されたカカオ豆はまず「精選(クリーニング)」が行われます。これはカビたカカオ豆や木くずや小石などの異物を取り除く作業です。次に行うのがチョコレートの風味を作る上で最重要の工程、「焙炒(ロースト)」です。生のカカオ豆からはチョコレート独特の香りはほとんどしません。発酵の工程で生まれた成分が焙炒を経てはじめてあの香ばしい豊かな香りが生まれるのです。また、渋みや酸味、雑味などもぬけマイルドな風味に変化します。「焙炒」はただ熱を加えればいいというわけではなく、加熱の温度や時間、方法によりチョコレートの芳香が決まる奥の深い重要な工程なのです。

焙炒、磨砕しカカオニブからカカオマスへ

カカオ豆は外皮(シェル)、胚芽(ジャーム)、胚乳(カカオニブ)からなります。焙炒(ロースト)の工程を経てカリカリに焼き上がったカカオ豆の外皮と胚芽を取りのぞき、粉砕して小粒のカカオニブにします。チョコレート作りにはこの「カカオニブ」を使っていきます。

カカオニブを細かくすり潰しペースト状にする工程を「磨砕(グラインディング)」といいます。カカオニブは50%以上が「ココアバター」と呼ばれる油脂分でできており、熱をかけながらすり潰すことでペースト状になります。これを「カカオマス」と呼びます。カカオマスはカカオ100%のチョコレートであり、カカオ由来の風味である苦味、酸味、渋味、香りがダイレクトに伝わります。しかし、そのままではそれらの刺激が強すぎてあまり美味しくありません。それを次の「混合(ミキシング)」の工程で他の原料と混ぜ、魅惑の味へと仕上げていきます。カカオマスに混ぜる原料としては、苦味を抑え甘味の素となる「砂糖」、雑味や酸味を抑えて味をまろやかにする粉末状の「乳成分」、風味をよりマイルドにし口どけをなめらかにするカカオマスの油脂分「ココアバター」、チョコレートの粘度を下げる大豆由来の乳化剤「レシチン」、甘い香りとカカオの雑味を消す効果のある「バニラ」などがあります。

混合した生地を冷やし固めてもチョコレートはできますが、さっくりとした味わいで粒の食感が残るため口当たりはあまりよくありません。そこで、より濃厚で滑らかな口当たりにするために「微細化(リファイニング)」という作業を行います。リファイナーやメランジャーという機械を使い、強い圧力をかけ舌でざらつきがなくなるまで粒子を細かくしていきます。次に、微細化したチョコレート生地を練り上げて風味を出していく作業「精錬(コンチング)」を行います。コンチングとは、微細化したチョコレート生地を「コンチェ」と呼ばれる機械で撹拌しながら練り上げることで、ココアバターを絞り出し、さらに柔らかく口どけのよいチョコレートに仕上げていきます。コンチングでは水分や酢酸も蒸散されるため、やりすぎると揮発性の高い香り成分や酸味も失われてしまうので、どんな風味に仕上げたいかによって時間や温度を調整する必要があります。Bean to Barでは、カカオ本来の香り高い風味を出すために敢えてコンチングをしないショップもあります。最近では、適度に酸味を残し香味を強調した大人の味わいのチョコレートが人気を集めています。このように「精錬」と「焙炒」という作業は、加熱方法や時間、温度の調整でチョコレートの風味を決定づける重要な工程であり、作り手の企業秘密と言えるでしょう。

コンチングが終われば後は冷やし固めるだけ…ではありません。最後にチョコレート特有の作業である「調温(テンパリング)」というちょっと手間のかかる工程があります。テンパリングとは、型に入れて冷やし固める前に、チョコレートの生地を温度調整して、中に含まれるココアバターを安定した結晶にする作業です。適度な硬さとツヤ、滑らかな口どけという美味しいチョコレートを作る上で欠かせない重要な工程です。作業内容としてはまず、チョコレートを50~55度に加熱し、次に温度を27~29度まで下げ、再度加熱して31~32度まで上げればできあがりです。この冷やす温度と加熱する温度を正確に、そして均一に行えばテンパリングはうまくいきます。この調温がうまくいかないと、ツヤがなく、固まりにくく、口どけも悪くなり、保存中にブルーム現象と呼ばれる劣化現象が起こり見た目も悪いチョコレートになってしまいます。一般的には機械でこの作業を行いますが、手作りでチョコレートを作る場合は、ボウルを使って湯煎、冷煎をして仕上げます。また、やり方は割愛しますが、カカオの粉を使う種結晶添加法という簡易的なテンパリング法もあります。調温を終えたチョコレートは、最後に型(モールド)に流し込み、冷やし固め、型から外して出来上がりとなります。これだけの工程を経て、ようやくツヤと美味しさを兼ね備えた美しい「魅惑のチョコレート」が完成するのです。